画角の理論式を、解析幾何学的に考えてみた。

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被写体の長さと向きと画角の関係式の立式

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カメラなどの映像上の画角について、被写体の位置と画面上の角度との関係図。

被写体がカメラから距離 d 離れているとして、被写体の長さは L_1 として、被写体の垂直線がカメラの向きから角θ_1だけ向きがずれているとする。

たとえばθ=0のとき、被写体はカメラに垂直である。つまり、被写体はカメラの真正面を向いている。

たとえばθ=90°の場合、被写体はカメラと平行であり、カメラの画面上の角度は0(ゼロ)になってしまう。

さて、画面上の角度のことを画角(がかく)と呼ぶとしよう。画角の記号は g で表すことにする。

さて、一般の角度θの場合、画角gの式は、次の関係式になる。

 

である。

これが、画角の理論の基礎式となる。

基礎式から広角の場合と望遠の場合の圧縮率を求める

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  • 被写体が近くにある場合(いわゆる「広角パース」)

被写体が近くにある場合(いわゆる「広角」)は、d=0 とみなせるので、

 

分子と分母のL_1 が打ち消されるので、

 

広角では被写体の垂直線の向きθの影響が強い。広角ではカメラからのズレ角度θの影響が強い。

  • 被写体が遠くにある場合(つまり「望遠パース」)

いっぽう、被写体が遠くにある場合(つまり望遠)、分母のdが、dはL_1sinθ_1よりとても大きくなるので、

 

と見なせる。分子の物体の長さL_1は打ち消されず、被写体の垂直線の向きθと同じくらい、物体の長さL_1の影響が残る。なので、カメラからのズレ角度θと同じくらい、物体の長さL_1の影響がある。

広角パース(被写体が近い)の場合の式

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により、もし被写体が近ければ、長さ(Lに相当)の画角(g)への影響が無効化され、被写体の垂直線の向き(θ)の影響だけが残る。

望遠パース

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画面上での奥行きの圧縮について

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実は広角でも望遠でも、「被写体のカメラを向いている面」と垂直な方向が圧縮される。

基本式

 

により、

もし被写体が奥にあれば、距離dが、そのぶん大きくなり、角度θの影響は、そのぶん弱まるからである。

絵画などの作画の通説の「望遠パースでは、奥行きが圧縮される。」という理論は、やや不正確。なぜ通説が不正確かと言うと、数式上では、広角パースでも奥行きが圧縮されるからである。

しいて、望遠と圧縮の関係を言うならば、「望遠パースでは、広角と比べ "相対的"には、奥行きが圧縮されたように見える。」 わざわざ「相対的」と断ったのは、つまり数式上では、広角も望遠も同じ理論式であり、べつに、とくに望遠だけで画角が圧縮されるなんて現象は起きない。作画の通説での「望遠パースでは、画角の奥行きが圧縮される。」という説は、はっきりいって、実は誤った説である。

このように、べつに望遠パースでなくても、撮影者から離れる方向が圧縮される。むしろ広角のほうがカメラから距離が近い分、距離dが小さくなるため、理論式

 

での分母が小さくなるので、 むしろ圧縮率が高くなる。なので、広角では被写体の離れる方向側の画角が、むしろ望遠よりも、さらに減りやすくなる。

広角の場合、離れる方向側の面積が小さいので意識しづらく、つい、まちがって「広角では圧縮が無い」と誤解しがちなのが、通説では広角の場合での奥行き圧縮が無視されている原因だろう。


また、理論式の距離dはカメラからの距離だけの関数であり、方向は区別しないので、カメラの左右に被写体があろうが、カメラの前方に被写体があろうが、理論式では区別されない。 たとえば被写体がカメラの左右前方にあり、そのため画面の端っこのほうに写る被写体でも、実は画面「左右」方向への圧縮率がされている。カメラの左右にあろうが、カメラとの距離dによって圧縮率が決まるため。(奥行き方向への圧縮では無い。例は球面パース。)

カメラの左右前方にある物体では、「被写体のカメラを向いている面」と垂直な方向とは、左右方向であり、カメラ(あるいは撮影者)の前後方向では無い。