「Topic:数と式」の版間の差分

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これでだいぶ見やすくなりました。
 
;=====循環小数が表す分数(発展)=====
<math>0.\dot{3}</math> のような循環小数を(分子・分母ともに整数の)分数に直すには、次のような計算をします。まず循環小数を ''x'' とおくと、
 
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;注意
:厳密には <math>3.333\ldots - 0.333\ldots = 3</math> のように循環節が打ち消しあうという計算が正しいことが示されていませんが、この計算は数学IIIで学習する[[Topic:極限|極限]]の概念を用いて、[[Topic:極限#無限等比級数の和|無限等比級数の和]]を考えることによって正しいことが証明されます。
 
;問題
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;解答
:<math>x = 0.999\ldots</math> とおくと、
::<math>\begin{array}{lcl}
10x - x &=& 9.999\ldots - 0.999\ldots \\
9x &=& 9
\end{array}</math>
:両辺を9で割ると、
::<math>\begin{array}{lcl}
x &=& \frac{9}{9} \\
x &=& 1
\end{array}</math>
:したがって 0.999... = 1。
 
;別解
:<math>0.333\ldots \times 3 = 0.999\ldots</math> であるから、
::<math>\begin{array}{lcl}
0.333\ldots &=& \frac{1}{3} \\
0.333\ldots \times 3 &=& \frac{1}{3} \times 3 \\
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0.999\ldots &=& 1
\end{array}</math>
:したがって 0.999... = 1。
 
;解説
:0.999... は 1 に等しい。厳密な証明は数学IIIで行うが、0.999... は限りなく 1 に近づいていく無限小数であり、そのような無限小数は 1 に等しいと定義する。
::<math>0.\dot{9} = 0.999\ldots = 1</math>:
:言い換えれば、まったく同じ数を表すのに 1 と 0.999... という2通りの表し方がある。限りなく 1 に近づいていく無限小数 0.999... が 1 と等しくないとすると、0.999... と 1 の間は途切れているということになってしまい、なめらかにつながった数直線で数を表すことができなくなる。したがって、0.999... は 1 に等しい。
 
====平方根====
230行目:
循環しない無限小数は、分子と分母が整数の分数で表すことはできません。つまり、数には有限小数や循環小数のように「分子・分母ともに整数の分数で表すことができる数」と、循環しない無限小数のように「分子・分母ともに整数の分数で表すことができない数」の2種類があると考えられます。
 
分子・分母ともに整数の分数で表すことができる数を、'''有理数'''(ゆうりすう、rational numbers)といいます。分子・分母ともに整数の分数で表すことができない数を、'''無理数'''(むりすう、irrational numbers)といいます。有理数は整数の分数、つまり比 (ratio) になる数なので、''rational'' number(レイショナル・ナンバー)と呼ばれます。<math>\frac{1}{2}</math> や <math>\frac{2}{3}</math>、<math>-\frac{3}{4}</math> などは有理数です。
 
;定義(有理数)
<math>\frac{1}{2}</math> や <math>\frac{2}{3}</math>、<math>-\frac{3}{4}</math> などは有理数です。<math>\sqrt{2}</math> や <math>\pi = 3.141592653589793\ldots</math> は分子・分母が整数の分数で表すことができないので、無理数です。
:整数 ''m'', ''n'' を用いて <math>r = \frac{m}{n}</math> と表すことのできる数 ''r'' を有理数という。
 
;補足
:整数 ''n'' は <math>\frac{n}{1}</math> という分数で表すことができるので、有理数に含まれます。
 
分子・分母ともに整数の分数で表すことができない数を、'''無理数'''(むりすう、irrational numbers)といいます。<math>\sqrt{2}</math> や <math>\pi \approx 3.141592653589793\ldots</math> は分子・分母が整数の分数で表すことができないので、無理数です([[#√2が無理数であることの証明|<math>\sqrt{2}</math> が無理数であることの証明]]を参照)。
 
有理数と無理数をあわせて'''実数'''(じっすう、real numbers)といいます。実数は有理数と無理数に分けられます。有理数でない実数は無理数であり、無理数でない実数は有理数です。
 
;注意
:''a'' を実数とすると、<math>(-a)^2 = a^2</math> が常に成り立つので、実数は2乗すると必ず正の数になります。つまり、<math>\sqrt{a}</math> は <math>a > 0</math> のときだけ意味をもちます。
 
===集合===
====√2が無理数であることの証明====
ある数が無理数であるかどうかの性質を'''無理性'''(むりせい、irrationality)といいます。<math>\sqrt{2}</math> の無理性の証明はいくつか知られていますが、ここでは背理法による証明を試みます。そのためにまず、次の補題を対偶による証明を用いて証明します。
 
;補題
:''m'' を整数とする。
::<math>m^2</math> が偶数ならば、''m'' は偶数である。
 
;証明
:補題の対偶をとると、
::''m'' が奇数ならば、<math>m^2</math> は奇数である。
:''m'' を奇数とすると、''m'' は整数 ''n'' を用いて、
::<math>m = 2n + 1</math>
:と表せる。両辺を2乗すると、
::<math>\begin{array}{lcl}
m^2 &=& (2n + 1)^2 \\
m^2 &=& (2n)^2 + 2 \cdot 2n \cdot 1 + 1^2 \\
m^2 &=& 2^2 n^2 + 4n + 1 \\
m^2 &=& 4n^2 + 4n + 1
\end{array}</math>
:右辺から2をくくり出すと、
::<math>m^2 = 2(2n^2 + 2n) + 1</math>
:''n'' が整数であることから <math>2n^2 + 2n</math> も整数であり、<math>m^2</math> は奇数である。したがって、整数 ''m'' が奇数ならば <math>m^2</math> は奇数であることが示せたので、<math>m^2</math> が偶数ならば ''m'' は偶数であることが示された。∎
 
;証明(<math>\sqrt{2}</math> の無理性)
:<math>\sqrt{2}</math> が有理数であると仮定すると、<math>\sqrt{2}</math> は 1 以外に公約数をもたない整数 ''m'', ''n'' を用いて次のように表せる。
::<math>\sqrt{2} = \frac{m}{n}</math>
:両辺を2乗すると、
::<math>\begin{array}{lcl}
(\sqrt{2})^2 &=& \left( \frac{m}{n} \right)^2 \\
2 &=& \frac{m^2}{n^2}
\end{array}</math>
:両辺に <math>n^2</math> を掛けて分母を払うと、
::<math>2n^2 = m^2</math>
:よって <math>m^2</math> は偶数であり、''m'' も偶数であるので、''m'' は正の整数 ''k'' を用いて、
::<math>m = 2k</math>
:と表せる。これを <math>2n^2 = m^2</math> の右辺に代入すると、
::<math>\begin{array}{lcl}
2n^2 &=& (2k)^2 \\
2n^2 &=& 2^2 k^2 \\
2n^2 &=& 4k^2
\end{array}</math>
:両辺を2で割ると、
::<math>n^2 = 2k^2</math>
:よって <math>n^2</math> は偶数であり、''n'' も偶数である。''m'' と ''n'' が偶数(2の倍数)であることは、''m'' と ''n'' が 1 以外の公約数をもたないことと矛盾する。したがって、<math>\sqrt{2}</math> は無理数である。∎
 
;補足
:整数 ''m'', ''n'' が 1 以外の公約数をもつと仮定すると、分数 <math>\frac{m}{n}</math> は約分してより簡単な分数に直すことができます。そのため、''m'', ''n'' は 1 以外の公約数をもたず、<math>\frac{m}{n}</math> は約分できない分数であると仮定したのです。このように、1 以外に公約数をもたない整数 ''m'', ''n'' は'''互いに素'''(たがいにそ、coprime)であるといいます。互いに素な整数 ''m'', ''n'' を使って表される、これ以上約分できないような分数 <math>\frac{m}{n}</math> は、'''既約分数'''(きやくぶんすう、irreducible fraction)といいます。
 
==式==
===式の展開と因数分解===