ここでは、民法とはどのようなものかについて学びます。

この講座は、民法 (総則)の講座の一部です。次の講義は、自然人です。

私法の一般法

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身の回りには、物の売買や貸借、雇用、あるいは損害賠償や結婚・離婚・相続など、様々な私的な関係があり、このように国と国民との関係と異なり、当事者が支配・従属関係になく対等・自由な立場にある私的な生活関係を対象とする法を私法といいます。これに対して、国や地方公共団体などの内部関係や、それらと国民との関係を規定する法を公法といいます。

そして、私的な関係を対象とする法は様々なものがありますが、その中でも民法は基本的な規則を定めたものであり、商法や会社法、労働基準法などの個別の法(特別法)に対して一般法とされるものです。

また、民法は、法律関係の内容を定めるものであることから、(権利行使の方法などを定める手続法ではなく)実体法でもあります。

特別法に規定がある場合には、それに反する一般法の規定は適用されません(特別法は一般法を破る)。そのため、そのような場合には各特別法を参照する必要がありますが、それら特別法については概ね、他の学科に譲り、この民法の各講座では一般法である民法と、それを中心とした関連する法について学習します。

(参照 w:民法

民法の基本原理

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近代民法の基本原理(近代私法の三大原則などとも呼ばれます)とは、権利能力平等の原則、私的自治の原則、所有権絶対の原則をいい、各国の近代的民法に共通して見られるものであり、日本の民法においても基本となるものとして認められています。

権利能力平等の原則とは、人は階級や職業、性別などによって差別されず、等しく権利義務の主体となることができるとするものです。

私的自治の原則とは、個人が他者からの干渉を受けることなく、自由に自己の私的な法律関係を形成することができ、国家はこれに不当な干渉をしてはならないというものです。また、これは自己の意思により決定した結果に拘束され、責任を負わなければならないとする(逆に言えば、自己の意思・責任によるものでなければそれに拘束されることはないとする)考え方にも結びつきます。具体的には、契約自由の原則や遺言自由の原則などという形で現れています。

そして所有権絶対の原則とは、土地所有に関する封建的拘束(土地の売買の禁止、農耕の強制など)を否定したものであり、所有者は自由にその所有物を使用・処分などできるということと、その所有権の侵害行為は、誰による侵害であれそれを排除できるというものです。

(参照 w:近代私法の三大原則

民法典

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日本では民法という名の成文法が定められていますが、全ての国家においてこのような形で私法の基本法としての民法が定められているわけではありません。例えばアメリカ合衆国では、主として判例法によって法が形成されており、制定法はこれを補充して個別の問題について扱うのみとなっています。

日本の現行民法典は、ヨーロッパ大陸法の手法を採用し、明治29年(1896年)に財産法の部分(第1編-第3編)が、明治31年(1898年)に家族法の部分(第4編・第5編)が法典として制定され、明治31年から実施されているものです。この間、そのつど改正は加えられてきましたが、戦後の憲法改正に伴う家族法部分の改正(昭和22年、1947年)を除けば、さほど大規模な改正は行われていません。

この原因としては、民法が定める基本原則部分は普遍的なものが多く、時代によって大きく変更されるものではないことと、民法が抽象的な規定をおいており、細部についてはその解釈の変更や特別法の制定により問題解決が図られてきたこと、などもあると考えられます。なお、法典全体は平成16年(2004年)に現代語化されました。

民法典はドイツ民法典の採用するパンデクテン方式(パンデクテン体系)を採用して編纂され、具体的な規定について、共通性を基礎に分類し、各分野に共通する部分を抽象的に規定して規定群を作り、前へ前へと括りだすことで体系化しており、抽象性の高いものとなっています。

(参照 w:パンデクテン方式

民法総則

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民法総則は、前記のパンデクテン方式による法典編纂において、民法全体について概ね共通するものとして最も前に置かれた規定群であり、権利の主体となる人や法人について、権利の客体となる物について、そして権利の変動(所得や消滅・移転など)原因となる法律行為や時効などについての規定が含まれます。

もっとも、民法の中でも親族・相続に関する部分については、総則規定の適用が排除されているものが多く、その意味では民法総則は財産法部分の共通規定という方が適当とも考えられます。

なお、「物」については、民法典では第一編 総則 第四章 物 において定められており、法人の次となっていますが、学習は法規定の順序通りである必要はなく、総則よりもむしろ物権においてよく扱われる内容であることから、民法 (物権)において扱うこととします。

(参照 w:民法総則

要件事実

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要件事実とは、一定の法律効果発生させるための要件に該当する具体的事実のことです。法律効果とは、所有権など権利の発生や消滅、あるいは発生・消滅の障害となる(例えば契約が無効になるなど)ことであり、ある規範によって、法律効果の発生を主張する者は、民事訴訟において、その法律効果を発生させる要件(例えば未成年であったこと)が存在することを主張立証する必要があります。そして、その要件に該当する具体的事実(例えば鈴木太郎は15歳だった)が要件事実であり、何が要件事実となるかや、原告・被告のどちらにその主張・立証責任があるかについては、民法その他の実体法の解釈によるものと考えられています。

そのため、要件事実は民法などの理解を反映したものとなり、どのような見解に立つかによってその内容は変わることとなります。そこで、要件事実の理解のためには、まず民法など実体法の理解が必須であり、その上で要件事実について理解することが求められます。

これについては、民事訴訟法証拠の評価の講座も参照してください。

(参照 w:要件事実