書評を書く/アドルフに告ぐ

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2009文春文庫版

手塚治虫 作、漫画

1~(最終巻)4

間違いなく手塚氏がたどり着いた頂点の一つ。

有り得ない愚か者もいろいろ登場するが、今でもこの辺の愚か者の大人は死ぬほどいる。

在日本領事館のナチス党員のセリフ。

「ユダヤ人は人間として最も下等なんだよ 虫ケラと同じだ きみはその虫ケラをかばおうとしてる これはばかげた行為だよ」

この人物は結局自身の言動に見合った最期を迎える。

ちょっと前くらいか、安倍晋三をヒトラーになぞらえた人が結構いて、右曲がりのダンディたちは一斉に批判したが、まあそうね、俺に言わせりゃあ安倍はヒトラーほど大物ではない。

昔田原総一朗さんが、インテリは自民党に投票しないって言ったけど、まあ俺も生まれてこの方、自民党に投票したことはない。

しかし自民党員全てを否定するわけではない。

例えば麻生さんなんて俺は結構好きでね。この人はユーモアのある人だと思う。

昔この人の発言で、物議をかもしたもので、ワイマール憲法をナチスは上手に骨抜きにした、こういう風にうまくやればいいんだよ^^、っていうのがあって、いやいやもちろんこれは問題あるけど、ユーモアとしては凄く面白い。この人は明らかに冗談でこれを言ってるよね。まあ批判する人も多いかもしれないけど、俺は割と好感持っている。

手塚氏がこの作品で執拗に描こうとした狂気と恐怖。

最近の身のまわりを見ると、これを全く理解しない、理解出来ないような人間がいっぱいいるような気がする。

最近の事なのか?

昔からそうだったのかもね、単に敗戦で頭を叩かれて、理解しているふりをしていたのだろう。

この狂気の真っただ中にいて、自分自身がその狂気となっている人間は、日常的にこの恐怖を周囲に振りまいて、放出して生きている。

こ、これは…凄い漫画だ。手塚氏の事はもちろん子供時代から知ってはいたが、それほど注目していなかった。ブラックジャックとか読んでいたけど、もちろんブラックジャックも凄い漫画なのだが…。手塚氏は終戦時16 歳。今でいえば高校2 年生だろう。戦時中の描写はものすごく的確なはずだ。最近の若い人は、我々の時代から比べて明らかに右傾化しているように見えるが、若い人たちにもぜひこの本を読んで欲しい。

最終巻、読了。…これは凄すぎる漫画だ…はっきり言って、全国民必読。未読の方は今すぐ書店、アマゾン、楽天へ GOして下さい。化物語とか読んで、自己満足にいい気になって、インチキな友達とお喋りに興じている場合じゃあないよ。

結局この物語りで描かれた、狂気と恐怖、暴力と悪徳とはいったい何だったのか? 第二次世界大戦が終了して 78年。我々はこの恐怖から解放されているのか?

そんなことは全くない。とりあえず戦後わかりやすい被告を死刑にして、とりあえずこの問題を解決させたふりをしているが、実際にはこの恐怖と狂気は今現在も世界中に溢れている。誰もがこの狂気に捉われ、この狂気に苦しんでいる。

ナチスとかファシズムとか、これっていったい何なのかね? いろいろな見方が出来るだろうが、一つ言葉で捉えてみると、自己満足と自己撞着、そして安易で無意味な集団化、例えばそう記述できるかもしれない。現代も問題になるパワハラとかモラハラとか、それもこの狂気の一形態だろう。

しかし手塚作品の常連超重要キャラクター、ランプ氏は凄いね。ヒトラーを撃ち殺しているよ(ネタバレ)。